なぜ、しまむらの従業員は土下座してしまったのか


先月末からネットで炎上しているしまむら従業員土下座事件」。ついに先日、加害者の女性が逮捕される事態にまで発展しましたね。


謝罪強要の疑いで43歳女を逮捕 店員に土下座させネットに投稿(MSN産経ニュース)



しまむら好きの私としては、この事件は下記の2点について、特に注目しておりました。


1)加害女性のパーソナリティ
2)従業員が土下座した理由


1)加害女性のパーソナリティについて。



この件について色んなニュースを見聞きするうちに、とあるキーワードが頭に浮かびました。それは「誇大自己症候群」というものです。


誇大自己症候群とは、簡単にいえば、


肥大した自己愛と「私が世界の中心である」という万能感から、「自分より弱い存在を意のままに支配しようとする人たち」のことです。

彼、彼女らはプライドが異様なまでに高く、「自分の判断が絶対的に正しい」と思い込んでいます。自分の思い通りにならないと烈火のごとく怒り、常軌を逸した行動(犯罪など)に走ることもあります。

その怒りのロジックは、「私の思い通りにしなかったあなたが悪い。私は被害者だ!」というもの。

誇大自己症候群の人たちは、自分がいちばん偉い、ということを認めてもらわないと気がすまないのです。そのために、利用できる相手はとことん利用します。



(参考:『誇大自己症候群』岡田尊司著、ちくま新書、2005年)



近年増えているといわれる「モンスタークレーマー」の一部には、こうした誇大自己症候群の人たちが相当、含まれているように思います。






彼、彼女らは少しでも気に食わないことがあると、自分の非を棚に上げ腹を立て、謝罪させようとします。そうすることで「自分が世界の中心である」という万能感を得るのです。背景には、ゆがんだ自己愛やコンプレックスがあります。



しまむらの従業員に土下座をさせた女性にも、誇大自己症候群の特徴がよく当てはまるように思います。



彼女の怒りのロジックは、100歩譲って、980円のタオルケットが不良品だったとしても、めちゃめちゃです。店員さんたちは、彼女がなぜ怒っているのかが全く理解できなかったことでしょう。




ここにきて、

2)しまむらの従業員が土下座した理由 
が見えてきます。



ふつう、仕事でミスをした際には、まず「自分ができなかったこと」を認めたうえで「謝罪する」ことが求められます。「私は◯月◯日までに☓☓を納品できませんでした。◇◇様には△△の点でご迷惑をお掛けし、申し訳ございません」といったふうに。



ですが今回の場合、しまむら側のミスは「タオルケットに穴が開いていた」という1点のみ(店員の対応が極端に悪かったかどうか等は、分からないのでひとまず置いておきます)。



なのでおそらく、店員さんは彼女がどうしてそこまで怒るのか、全く理解できなかったはずです。フツーのお客さんなら、店側が不良品のミスを認めた時点で納得し、粛々と返品なり交換なりの手続きに入ってくれるはずなのですが、彼女は違ったからです。



そもそも彼女は「しまむら店員が私の気分を害したこと」に対して腹を立てているので、「不良品をお渡ししてしまい、申し訳ございませんでした」というポイントを絞った謝罪は全く意味がないどころか、「どうしてお前たちは私の怒りを理解しないのだ!」と、火に油を注ぐ結果になってしまったわけです。




そう言われると、店員さんは相手の怒りの原因が分からないので、何をどう謝ればよいのかも分からなくなってしまいます。だから、とにかく謝り倒すしかなかったのでしょう。「土下座しろ」と言われれば、従うしかなかったのです。






しまむらの店員さんが土下座してしまった理由は、「モンスタークレーマー」である彼女の肥大化した自己愛を満たすため…だったのかもしれません。



加害者女性が求めていたのはおそらく、冗談抜きに「お客様は神様です」というフレーズをしまむらの店員さんが行動に移すことだったのですから……



現代人に増えていると言われる「誇大自己症候群」。これについては今後もちょくちょく、考えていこうと思います。





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今ドキ男子は女子よりも「結婚」に憧れているらしい(anan調べ)

259日ぶりのブログです。こんにちは、かやです。


今週のanan『男が結婚を決める理由』によると、いま「結婚したい男子」が増えているそうです。最近の男子は女子よりも、結婚に憧れを抱いているようです。

http://magazineworld.jp/anan/1874/#diary


同誌が行ったアンケートでは、「結婚している人の方が幸せである」と回答した女子は26%。それに対し、男子は35%に上っています。


さらに今どきの男子はマイホーム志向も強めで、子どもが欲しいと希望する男子も少なくないとananは強調しています。


というわけで、そんな男子の「結婚スイッチ」をうまく入れるのが、女子が果たすべき役割なのだそうです。


実際、「家庭」に憧れる人は増えています。


ちょっと古いデータになりますが、6年前の「国民生活白書」では、家族を「大切」と思う人は約50%で、高度成長の60年代から約3倍(!)に増えています。

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h19/01_honpen/index.html


『ALWAYS三丁目の夕日』的な情景を想像するとつい、昭和の昔は今よりも家族が大切にされていたのかな〜という印象をもってしまいがちですが、「家族」への思い入れが強いのは、むしろ現代人の方なのですね。



一方で皮肉なことに、現代人が家族と一緒に過ごす時間は減り続けています。



同白書によると、平日に家族全員がそろう1日当たりの時間が、「なし」または「0〜2時間台」と回答した人の割合は、1985年の42%から2005年には約50%に上昇。


半数近くの家族が、平日に1日あたり2時間以下しか全員がそろわないという結果になっています。


また、同白書には「父親の4人に1人は平日ほとんど子どもと接する機会がない」とのデータもあり、子育て世代のお父さんたちは、ほとんど家族の蚊帳の外…になってしまっていることが分かります。


ようは家族が一緒に過ごす時間が減っているからこそ、逆説的に「家族は大切である」と考える人が増えているのでしょう。


昨年度の内閣府男女共同参画社会に関する世論調査 」によれば、「夫は仕事・妻は家庭」に賛成する20代男子は55.7%。これは同年代の女子よりも多い数字です。


ここで冒頭のananに戻りますが、つまり、今の男子たちは「結婚」にあこがれているというより、希少価値の高まった「家族」の絆的なものにあこがれているのかもしれません。

離婚率は高止まり、希薄化する家族関係をさまざまな所で眼にしてきたイマドキの男子たちは、家庭というものにある種のファンタジー的な思いを抱いているのではないでしょうか。


この社会で「普通の」家族を作るのはますます難しくなっています。多くの女性が結婚相手には年収400〜500万円台を希望しているのに対し、男性の平均年収は20代前半が262万円、20代後半が367万円、30代前半でようやく434万円。非正規雇用の男性については、平均年収225万円と、さらに低くなります。

国税庁 民間給与の実態調査)
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2011/minkan.htm



女性が求める年収を満たす男性は少なく、ミスマッチと晩婚化が起きている所以です。「お金があれば結婚もいいんだけど…」と、消極的になっている男子も多いことでしょう。


結婚や家族形成はもはや、一部の人たちの嗜好品になりつつあるのです。


結婚やマイホームの購入、子育てには莫大なお金がかかります。特に都会でマンションを買おうと思えば、数千万円のローンに縛られるわけです。頭金だって必要です。憧れのマイホームは、今の若者たちにとっては「安定」の象徴かもしれません。


だからこそ憧れるし、手に入れたい。そんな男子たちの思いがにじんで涙なしには見ることのできない、今週のananなのでした。





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「愛は年収」…承知しました

みなさま、あけましておめでとうございます。多分、今年もっとも遅く新年の挨拶をしたブロガーという程、遅くもなく中途半端なのが、かやになります。


さて、ほとんど更新しなくなったと思いきや、こうして突発的に更新してみたりする当ブログですが、今回は2013年ということで、愛について語ってみようと思います(年関係ない)。


「愛とは◯◯である」と聞いて、みなさんは「◯◯」に何という言葉を入れるでしょうか。


玉の輿を狙って合コンに明け暮れる主人公を描いた月9ドラマ「やまとなでしこ」(2000年)では、「愛は年収」というコピーが話題になりましたね。愛は年収、愛は年収、愛はネンシュウ…繰り返し唱えていたら、ネンシュウの2文字がゲシュタルト崩壊を起こしそうです。



結婚相手紹介サービス「ノッツェ」を運営する結婚情報センターによると、同サービスの会員女性のうち63%は男性に「500万円以上」の年収を希望しており、最低でも300万円以上を求める女性が8割近くを占めるそうです
*1



一方、男性はというと、約8割が女性の年収300万円未満で満足しているという結果に。男性は結婚相手に対し「好きな分野・趣味の仕事を見つけてほしい(28.9%)」、「仕事をやめてほしい(9%)」など、収入に対しては期待しない傾向にあるようです。そんなに優しくて大丈夫?!と少し心配になりましたが、回答者はマジメに結婚相談所に登録するくらいなので、ある程度収入には自信がある男性が多いのかもしれません。



結婚後の生活についてたずねてみると、「現在の仕事をそのまま続ける」という女性は半分以下。「休みの多い仕事を見つけたい」が2割、「仕事をやめて主婦になりたい」が3割です。


寿退社を夢見る女性が3割もいるという結果に、「ねぇねぇ、稼ぎがないってことは旦那に『誰のお陰で飯食ってるんだ!』とかって見下されちゃうかもよ?いいの?」なんてものすごく意地の悪い質問を投げかけたくなる。



現実に、今の夫婦は共働きが多数派。専業主婦という選択肢は少数派になりつつあるのです。



20〜40代の未婚男性のうち、なんと8割が年収400万円以下。先のアンケートで最多の票を集めた500万〜700万円の層はたったの4.9%に過ぎません。うち30代はわずか2%という、婚活女性にとっては世知辛い数字。要はお金のある男性から先に結婚していくのです…



「結婚はカオとカネの交換だ」と言い切ったのは心理学者の小倉千加子氏。女性の平均年収が300万円に満たない現状では、多くの女性が結婚相手に年収を求めるのを攻めることはできません。かつて「シロガネーゼ」という言葉を作った主婦雑誌『VERY』を読むと、「結局、愛は年収なのか!?」と突っ込みたくもなります。



これは想像ですが、女性の平均年収が今の1.5倍、つまり男性と同じくらいになったらどうなるでしょう。
合コンではワリカンが当たり前となり、場合によって専業主夫を選ぶ男性も増加、お金のある女性は男性をより厳しく、顔や性格で選別するようになるかもしれません。「オトコは若い方がいい」なんて平然と言う女子も増えるでしょう。なんだか殺伐とした光景…と思いきや、それって今の男女関係を逆にしただけなんですよね。



でも女性の年収が上がれば、結婚相手に年収500万円以上を求める必要もなくなるわけです。条件面で品定めすることもなくなり、純粋な恋愛感情のみで相手を選べるようになるかもしれない。若いうちからテクニックを磨き、高収入の男を捕まえることばかりが幸せになる方法ではないはず…


もちろんそれで幸せになる人がいるのは確かだと思う。でもどうせなら相手のスペックを気にすることなく、自分の本心から湧き出る感情と向き合う恋愛をしたほうがいい気もするんですよ。自由恋愛にはお金が必要、とまでは言い切れませんが、女が経済的に自立していることはきっと、本当の恋(って何だよ)をするためにはプラスになるはずです…!


2013年、手に入れた男のスペックを競い合うゲームだけを恋愛と呼ぶのは、もうやめよう!なんて啖呵切ってみたりして。今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。





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*1:婚活男女の金銭感覚調査 - 女性の6割は男性に年収500万円以上を希望http://news.mynavi.jp/news/2012/12/28/136/

おもちゃのハローマックのツイートから日本市場の開国と大店立地法へと思いを馳せている間にも・・・

ご無沙汰しております。かやです。


あっという間に11月半ば、2012年も終わりに近づいております。
1ヶ月と2週間後にはみなさんの大好きなクリスマス。


両親が厳しかったためクリスマスにプレゼントを買ってもらったことがない私はこの時期、
ショッピングセンターの店頭に溢れるおもちゃを見ると複雑な気持ちに。


昔、喉から手が出るほど欲しかったリカちゃんハウスが並んでいたりすると、 
じーっと見つめてしまうのです。


おもちゃ屋さんといえば、
2009年に閉店したおもちゃのハローマック」の公式と見紛うばかりの
Twitterアカウントhttp://twitter.com/hello_mac_lion)が話題になっているようです。

ツイートするのはするのは同店のマスコット「マックライオン」。


「ぼく、ほんとはわかってるよ。みんなもうハローマックにはきてくれないんだって。でも、ぼくは
いまでもおもちゃのまちにいるよ。ねえ、ぼくはいつでもおもちゃのまちにいるよ。」(ツイート引用)


「あのころみんなはおとうさんおかあさんにすがっておねだりしていたけど、ぼくはマックライオン
だれにすがればよかったのかな。」 (ツイート引用)


これらの切ないツイートに対して、ネット民からはおもちゃのハローマックって閉店してたんだ」「始めてゲーム買ったのがハローマックだった」「切なすぎる」などのコメントが多数寄せられているもよう…


誰が何の目的でやっているのかはわかりませんが、フォロワーは開始後、数日で1万4000人を超えています。
どこまでフォロワーが増えるのかちょっと興味深くすらあります。



おもちゃのハローマックは1985年から2009年まで靴のチヨダが運営していたおもちゃの量販店。
愛らしいライオン「マックライオン」がトレードマークでした。


90年代前半に少年時代を過ごした人たち=今の30代くらいの世代にとっては、
親しみのあるおもちゃ屋さんではないでしょうか。


実際にその世代の知人に聞いてみましたが、
親に買ってもらったおもちゃに関する甘く切ない?思い出が次々に蘇ってきて胸の奥が締め付けられるような感慨を
覚えるとか、覚えないとか。


最盛期には500店舗を展開していたといいますが、00年頃から徐々に衰退し、09年に完全撤退


日本のハローマックに代わっておもちゃ市場を制覇したのは、アメリカのトイザらスです


トイザらスハローマック誕生の6年後、91年に日本上陸。
当時は日米貿易摩擦の真っ只中。パパブッシュが2号店の視察に訪れるなど話題になったようです。
日本のおもちゃ市場にとってはまさに、黒船だったでしょう。


ただ、その後しばらくはチヨダのハローマックが優勢でした。


しかし98年にアメリカの外圧で(と言い切っちゃってもいいと思いますが)大店法が改正され、それまで地元商店街を守るために制限されていた大型ショッピングセンターの出店条件が緩和されると様子が違ってきます


トイザらスは00年に100店舗を達成。


ハローマックその頃から、郊外型ショッピングセンターのテナントや大型店舗として展開する
トイザらスにお客さんを奪われ始めます。マックライオンの笑顔にも陰りが…


09年、ハローマックは完全撤退


かつての店舗が今どうなっているかというと、靴のチヨダが展開する靴流通センターになっていたり、
コンビニになったり、TSUTAYAになったり。チヨダのウィキペディアには、異様なほど詳しい説明が載っています。

ここまで調べるとは。執筆者はよっぽど、ハローマックに対する執念があるのでしょう。


かつて、ハローマックのチラシをわくわくしながら眺めた今の20代後半〜30代くらいの人たちは、
トイザらスに負け、知らない間に姿を消したマックライオンのツイートを、ほろ苦い思いで読むことでしょう


「あのころハローマックにきてくれてたみんながいまではハローワークにいってる。ねえ、そこにぼくはいないよ。」(ツイート引用)なんて言わないで。切なくなるから。


とはいえ、85年に誕生したハローマックが、それまで細々と生計を立てていた街の小さな玩具屋さんを潰してしまったという事実もまた、あるのでしょう。


そのハローマックが、今度はアメリカの外圧によって鳴り物入りで上陸したトイザらスに凌駕されるという。
閉店したハローマックの中には今、コスプレやアダルトグッズを売る「大人のおもちゃ屋さん」になっている店もあるようです。子どもの玩具から大人の玩具を売る店へ…


さてここまで、おもちゃ屋さんの栄枯盛衰に思う、日本市場の開国と大店立地法でした(そうか?)。


こんな風にハローマックに思いを馳せている間にも、クリスマスは刻一刻と近づいて来るのでした。


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保険大好き日本人が、みんなで支える生保レディ

ご無沙汰しております、ノマド系OL、かやです。ちょっと仕事がバタバタしており、久々の更新になってしまいました。


さて少し前ですが、4/21の週刊ダイヤモンドが『騙されない保険』特集を組んでいます



内容をざっとひとことでまとめると、「保険各社は、消費者の不安を煽って複雑な商品を売りつけることもある。注意して選べ」。保険会社の口車に乗せられホイホイ加入すると損するぞ、といった感じです。



ライフネット生命岩瀬大輔氏によると、日本人は生命保険が大好き。全世帯における生保加入率は90%で、9割の世帯が何らかの生命保険に入っていることになります。この率はアメリカの2.2倍、イギリスの2.5倍、フランスの2.25倍です*1



また、日本人の人口1人あたりの「生命保険保障額」はアメリカの約3倍、イギリスの約6倍。平均すると、20年間で1世帯あたり1,000万円近い生命保険料を払っている計算になるそうです。すごい金額ですね。



日本人の生保加入率が一気に高まったのは70年代から
。経済成長とともに都市部で核家族の割合が増え、「一家の大黒柱」を期待される男性が次々と加入していったのが表向きの理由とされています。



父親1人で一家を食べさせていくわけですから、その父親が死んでしまったら大変です。サラリーマンの夫に主婦の妻という核家族にとって、大黒柱である父親の死は最も大きなリスク。だから「夫の死亡保障」となる生命保険が売れたわけです。主婦はこぞって、夫に高い生命保険をかけました。「ご主人が亡くなったときのために備えましょう」。生保レディのこのセールストークが、分厚い専業主婦層の心に響いたんですね。



ただ、都市化が進んで専業主婦率が高まれば生命保険が売れるかといえばそうではない。欧米と比べ、やっぱり日本人は生命保険に入りすぎなのです。



……ここには日本の生命保険会社特有の事情があります。



日本でも、70年代にまでは満期保険額と死亡保障額が同じになる、「養老保険」が中心でした。30歳で、60歳で満期になる500万の保険を買ったとしても、殆どの人は健康のまま60歳を迎え、満額の500万円を受け取ります。つまり保険というより「貯蓄」に近い



ところが70年代以降、この「貯蓄」の部分を薄くし、加入者が亡くなった場合の「死亡保障金」が満期保険額の数十倍、という「保障型」の商品が増え始めます。70年代に始まる、「死亡保障の大型化」ですね。



払った保険料が満期を迎えればそのまま戻ってくる「貯蓄タイプ」に比べ、基本的には掛け捨ての「保障タイプ」は、保険会社が儲かる
。貯蓄タイプと保障タイプでは、利益率が数倍違うのです。消費者からすれば貯蓄タイプで十分なわけですが、70年代以降、生保各社は収益性の高い保障タイプの商品をどんどん増やしていったのです。



80年代になり、働く女性が増えるなどの理由から「死亡保障」のニーズが少なくなっても、保険各社は従来の売り方を変えませんでした。それどころか知識の少ない消費者に対し、保険の切り替えのさい、貯蓄型から保障型へと転換させるという「転換セールス」まで行い、自社の利益を守り続けたのです…。



なぜそこまでして、保障タイプの保険を売りまくる必要があったのか?


それは、日本の生保会社の営業システムが原因です。


みなさんは、「生保レディ」と呼ばれる女性の営業さんから「保険はぜひウチで」とお願いされることがありませんか?私も母の友人から、ときどき生保加入を勧められます。



1社専属の生保レディが直接、お客さんの元へ行って保険を売る。このスタイルは海外にはみられない、日本独自の仕組みらしいのですね。



この生保レディによる販売にかかるコストをまかなうため、日本の保険会社は収益性の保障型の商品を作り続ける必要があったのです。日本の生命保険は生保レディの人件費が上乗せされ、どんどん高額に、そして複雑になってきたのです。どデカい販売網を維持するためには、収益性の高い商品を作り続けなくてはならなかったんですね…



主婦が多数派だった高度成長期、彼女たちの中には、離婚や夫の死亡などでやむを得ず働かねばならなくなったケースも多かったようです。生保レディの離職率は50%。彼女たちには高いノルマが課せられます。そのぶん、歩合給でインセンティブもつく。そのインセンティブは、彼女たちが売る高い生命保険料に含まれているのです。



つまり、主婦にとって最大のリスクは夫の死なわけですが、そのリスクを減らす(と信じられていた)生命保険を、夫と離別した女性たち、または夫の収入が不十分だから働かねばならない女性たちが、主婦たちに向けて売ってきたのです



多くの女性が働かずにすんでいた時代、主婦になれなかった女性たちにとって生保レディは職の受け皿となっていたんですね〜



そしてその生保レディを食わせるため、保険会社は収益性の高い複雑な商品を作り続けてきました
。とはいえ生保レディたちは、高いノルマが達成できず、1年で半数が辞めていきます。離職率、実に50%。どこのブラック企業か…って感じですよね。そんな生保レディにかかる経費を回収するため、さらに利益率の高い商品をつくる生保会社…日本の生命保険会社は、戦後の「男性主稼ぎモデル」のリスク=夫の死を媒介として、ぶくぶく成長してきたといえるでしょう



まあ特に養う家族もいない私としては、重〜い生命保険など背負うことなく、気軽に生きていきたいですけれどね。高い生命保険料を払えるサラリーマン家庭は、ある意味、いまだに「男性主稼ぎモデル」を信じていられる幸福な層かもしれません。だまされるな生命保険とはよくいったものですw それでは今回はこのへんで^^



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取材協力:生命保険 評論家 長嶺恒雄氏 Twitterアカウント @TsuneoF

*1:『生命保険のカラクリ』文藝春秋

バレンタインデーを中止したがる非モテたちの闘い 〜恋愛至上主義 VS サブカルチャー〜

バレンタインデー前日ですがみなさん、準備はいかがですか。


中1の時に好きな男の子にチョコをあげるも玉砕した経験から、早々とバレンタインデーを見限ってきた私です。


ネット上では毎年のように「今年のバレンタインデーは中止になりました」系のコピペが出回っておりますね。男子諸君にとって2月14日は、色恋沙汰に興味があるなしに関わらず自意識過剰になってしまう日なのでしょう、知らないけど。



日本のバレンタインは、チョコレート業界の陰謀によって始まったとか、ソニープラザのキャンペーンに由来するなどと言われたりしています



はじまりには諸説あるようですが、チョコレート会社が2月14日をバレンタインデーとして提唱したのがだいたい60年代、学生たちから主婦層にまで広く普及したのが70年代前半〜80年代とのこと。



まぁ、なぜ普及したかはこのくらいにして本題です。バレンタインデーが一般化して以来、モテるか否かがチョコの数で可視化されるようになりました。結果としてモテる男子が偉くなり、男子は女子の目を気にするようになりました*1



恋愛マーケットが男子の価値を決めていく。中にはそんな風潮を抑圧的に感じる層も出てきます。そう、モテや色恋沙汰からは距離を置く「オタク」の登場です




アニメなどの知識を収集することに熱中するオタクの存在が一般的になったのは、70年代後半〜80年代。彼らは1988年から翌89年に起きた宮崎勤の「連続幼女誘拐殺人事件」によりネガティブな烙印を押されてしまうわけですが、それ以降もオタクという集団は「恋愛マーケットから距離を置く人たち」として一定の存在感を示し続けています。




オタクたちと同様、女子の中にも恋愛至上主義とは一線を置く「腐女子」層が出てきます腐女子と同列に語られることは少ないものの、90年代以降はビジュアル系バンドに恋をし、西洋人形のようなファッションに身を包む「ゴスロリ愛好者」層も登場。彼女たちの性質は難しく言えば、「男女の抑圧的な性関係からの逃避」「成熟した女性の身体への拒絶感から虚構の身体を志向する」などと解釈することもできるのですが、それはとりあえずおいておくとしましょう。



とにかくかやは、腐女子ゴスロリ少女たちの存在理由の1つが「恋愛至上主義者たちとの差異化」にあると思うのですよ。「あいつらと自分は違う」というね




オタクが、バレンタインに一喜一憂するような恋愛ミーハー層を「ケッ」と感じる人たちだとすれば、腐女子ゴスロリ愛好者層もまた「恋愛至上主義者の女の子たちと自分は違う」と思っている層なんですね。日本を代表するオタク文化腐女子文化が、恋愛至上主義への反発から生まれた部分は大きい。




彼ら、彼女らは、抑圧的な恋愛中心的価値観との差異化をはかるために、オタクやボーイズラブという独自のカルチャーを生み出したのです
。これはミーハーな恋愛至上主義に抗う「対抗文化」といってもよいと思います。それが今や、政府が「日本発オタク・カワイイカルチャー」として鳴り物入りで輸出産業にしようとすらしている。恐るべし非モテ対抗文化。




バレンタインが今年も中止になるかはともかく、これを機に恋愛とサブカルチャーに思いをはせるのもまた一興ではあります。



まぁ高みの見物を装っているかやも明日、会社で配る義理チョコはバッチリ準備してたりしますけどね><



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*1:ここらへんの事情は堀井憲一郎著『若者殺しの時代』や中村うさぎ著『ババア・ウォーズ3 税務署の復讐』に詳しいです